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貴族階級の制度が同じ人間の間に隔たりを作る。位がどんなに高くとも、人としての品位が低ければ、ただの横暴な権力者にしか成り得ない──
ワインで栄えたこの土地は、元はモーリスの一族。グレゴリー家先祖が改良に手を加え続けた土と種造りによって支えられてきた──
何もなかった土地を国が誇れるまでの豊かな地に育んだのは紛れもないこのグレゴリー家の血を受け継いだ者達だ──
それを欲にかられ横から手を出そうとする者の多いことと言ったらなかった。
特にこのヘラウド公爵は私利私欲のためには何でもするといった悪どい評判の噂も絶えない。
フィンデルが心配する気持ちも十分に理解できる。
モーリスは組んだ手を口元に充てため息をついた。
「ご主人様──ヘラウド公爵様の使いの方がお目見えになられました…」
執事が扉口で声をかけた。
「通してよかろう」
「かしこまりました…では」
主人の言葉を聞き入れた執事は執務室を後にする。暫くすると、ヘラウド公爵の使者を連れて執務室へ戻ってきた。
フィンデルはモーリスの隣で使者の様子を窺っている。
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