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心臓は確かに鼓動を打っている。
だがもうあれだけ溢れていた血はすっかり止まっている──
ただ、それは止まったわけではなく…流れ出るものが底をついただけに過ぎなかった…
グレイはモーリスが開け放したままの揺れる扉を見るとすっかり冷めてしまった目の前のお茶にまた口をつけた──
お洒落なティーカップ。その中で琥珀色の水に小さな波紋が浮かぶ。
グレイはそれを見つめた──
お前の涙が渇れるまで…
別れを惜しむがいい──
…お前の清き魂に免じてそのくらいの時間なら作ってやる──
魔物になってしまえば涙とは無縁──
だがそれは
誇り高きお前がどれだけ人でいたときの感情を保って居られるかに尽きるがな…
グレイはクウーっと飲み干した後のティーカップを眺め回した。
「ふ…実にいいセンスだ…これは俺専用にしてやろう」
そう呟くとゆっくりと足を組み直していた──。
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