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そしてまた急に開かれた執務室の入口に目を向けた。
「モーリス様!イザベラは居りますかしらっ?」
焦ったように伺うとイザベラの姿を見付けてあっと声を上げる。
「イザベラっ!!やっと見つけたわっ」
イザベラはモーリスが腰掛けていた椅子の陰に慌てて隠れた。
産まれた時から母親が居ないイザベラの乳母を勤めてきたリモーネは、イザベラを厳しくしつける。
「イザベラ、リモーネを困らせては駄目だ。遊んでもらえなくなるぞ」
「今遊んでもらってたのよ?お父様」
「……?」
「隠れんぼですよ、モーリス様」
「なるほど──私に逢いに来たんじゃなくて隠れにきたのか」
小さくショックを受ける主人をフィンデルもリモーネも笑っていた。
亡き妻が遺してくれた大切な宝。妻と生き写しの金糸の緩やかな波を打つ髪に人形のように白い肌。
大事な娘と周りの使用人達に囲まれて幸せに暮らしていた邸を悪夢が襲ったのはその数日後だった──
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