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そんなこんなでパーティーを組むことになったのだが、当初に比べればまとまってきたと思う。
「アレス、行ったわよ!」
リディアの声にハッと我に帰る。
「あ、ああ」
アレスは剣を構え直した。
マットラットが、アレスに向かって突進してくる。
「ぐっ!」
アレスはなんとか剣で受け止めた。
そこへ、横から回り込んだセオが槍を突き上げる。
「やあっ!」
セオの攻撃で宙に浮いたマットラットを、今度はアレスの剣が凪ぎ払った。
「たあーーっ!」
岩に叩きつけられたマットラットは、そのまま地面にズルズル落ちるとやがて消えていった。
(あと一匹!)
アレスは視線を戻した。
しかし、最後の一匹が「ギッギッギ……」と鳴き始める。
「まずいですね。仲間を呼ぶつもりです」
「えっ?」
アレスはセオを見た。
魔物の中には、時々仲間を呼ぶものがいる。早く倒さなければ、また増えてしまうだろう。
「ほっほっほ。そーれ、丸焼きじゃあ~!」
ドーハンが杖を振りかざす。
「ファイヤー!」
かけ声と共に火の力が解放され、マットラットが炎に包まれる。
「ギィー!」
黒焦げになったマットラットは、そのまま地面に倒れた。
ドーハンがマットラットに近付くと、やがて煙となって消えてしまう。
「なんじゃ、やっぱり消えてしまうか」
ドーハンは、ちょっと残念そうに言った。
「さて、依頼の物も見つけましたし、森を出ましょう」
「そうだな」
アレスは剣を鞘に納めた。
「ふうん、ちょっとは剣の腕も上がったみたいね」
リディアがアレスを見て言う。
「えっ? そうかな?」
「まあ、セオのアシストもあったからだけど、今のは良かったんじゃない?」
そう言って、フッと笑みを浮かべる。
(やった! 初めて褒めてもらった!)
アレスは、嬉しくてたまらなくなって顔をほころばせた。が、すぐに凍り付く。
リディアの傍らに立っていたドーハンが、リディアのお尻を撫で回していたのだ。
「リディアちゃん。ワシも誉めとくれ」
リディアの顔がみるみる険しくなり、ブルブルと震えだす。
「この、エロジジイ!」
「ああ、そんな怒らんでくれ~!」
リディアが剣を振り回し、ドーハンは剣をかわしながら逃げ惑う。
「はあ……」
アレスは大きな溜め息をついた。
(やっぱり、人選まちがえたのかな……)
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