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セオは天界神ファーネスに仕える神官で、頭脳明晰。しかも顔立ちの整ったかなりの美男子だ。
アレスに言わせれば「頭の硬い、キザ男」らしいが……。
「ふむ。どうやら、北と南を間違ってるようですね。さっきの大木から左ではなく、右に曲がらなければいけなかったようです」
「ええ~!? 冗談でしょ?」
セオの言葉にオーバーリアクションをするのは、手足がむき出しの深紅の鎧を纏った、女剣士のリディアだ。
「もう、何やってんのよ!」
「わ、悪かったよ……」
リディアの剣幕にタジタジになりながら、アレスは謝罪の言葉を口にする。
「だッはッはッは……! さすがはアレスじゃ。今日も冴えとるの」
とても誉め言葉とは思えないようなセリフを吐いたのは、このパーティーの最高齢、老魔導師ドーハン。
「そ、そんなに笑うことないだろ。だいたい、この地図が――」
「さっきの大木の所まで戻りましょう」
「そうね」
アレスが言い訳を言い終わる前に、セオとリディアは来た道を戻り始めた。
「お、おい!」
「ああ、リディアちゃん待っとくれ」
ドーハンがリディアのお尻を追いかける。
「ちょ、ちょっと待てって……」
三人に取り残されたアレスは、グッと拳を握りしめる。
(このパーティーのリーダーは俺だぞ。それなのに……)
アレスは、子供の頃から憧れだった勇者になるため、剣術の道場にも通ったし、魔法の勉強もした。
しかし、どちらも成果が伸びず中途半端。
なんとか勇者試験には合格したものの、史上最低の点数だったらしい。
冒険の旅に出るために強い仲間を募集しようとしたが、結局集まったのは、腕はたつが高飛車な女剣士、頭でっかちキザ男の神官、そして、女好きのエロ老魔導師の三人。
(人選間違えたかな……)
そんなことをボンヤリ考えていると、
「アレス。置いてくわよ!」
リディアが金切り声をあげる。
「今、行くから!」
アレスは三人の元へ走っていく。
『前途多難』とは正にこの事。
アレスは勇者の面目を保てるのか…… ?
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