19人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば、出会った頃からそうだった。
アレスが初めてセオに会ったのは、ルコダの街にある中央広場。その噴水の前で、セオは自分が仕える神「天界神ファーネス」の教えを民衆に説いていた。
セオの説得力のある話し方と、その整った顔立ちのおかげで、多くの人々が耳を傾けていたのだった。
だがそんな時、ガラの悪そうな男達が数人、集まっていた人々の中に割って入ってきた。
手にした武器をちらつかせ、困惑顔の人達にガンを飛ばしながら噴水前までやってくる。
「おいおい、何やってるんだあ~?」
「こんな所に固まってちゃ、自由に歩けねーだろ」
「おい、兄ちゃん。ボスの通行の邪魔してくれたのはアンタの責任だよな。どう落とし前つけてくれるんだ?」
一人の男がセオに近付き、手にしたナイフを顔に近付けてきた。
しかし、セオは眉ひとつ動かさない。
「邪魔だというなら、別の場所を通ればいいでしょう。何の罪もない人々を脅すなど、神の怒りを買うことになりますよ」
落ち着いた口調でそう言うと、切れ長のグレーの瞳で相手を見据えた。
「なに~!? 貴様、自分が置かれてる立場を分かってねえようだな!」
セオの態度に逆上したのか、男は持っていたナイフで切りつけてきた。
人々の間で「キャー!」と悲鳴が上がる。
セオは咄嗟に避けたものの、刃先が頬をかすり少しばかり血が滲んだ。
アレスはその時、噴水よりは離れた所にいた。
何の騒ぎだろうとそちらに目を向けると、急に見知らぬ女に腕を掴まれた。
「あなた剣士なんでしょ? あの神官の人を助けてあげて!」
「はあっ!? なんで俺が?」
突然のことに戸惑ったアレスだったが、女に腕を捕まれたまま噴水の所へと連れてこられてしまった。
「なんだあ? お前は?」
ボスらしき男がずんずんと近付き、アレスを睨み付ける。屈強そうな体つきに、頬には刀傷……。
「や……、な、何でもないです」
男の迫力に逃げ出そうとすると、女がぐいっとアレスを引き戻した。
「この人が、アンタ達なんかやっつけてくれるんだから!」
(な、なんでだよ~!)
アレスは逃げ出したくてたまらかったが、女にガッチリ腕を捕まれていてどうしようもできない。
「ほう? それなら、気がすむまで相手してやる……よ!」
「!……」
最初のコメントを投稿しよう!