第1章

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「大丈夫、麻酔弾です…」 愛理はようやく構えを解いた。 「愛理様、咄嗟の判断ありがとうございます」 「…」 愛理は、倒れている深也を黙って見つめていた。 それをマリアが見て思った。 -な、な、何なのだ、この男はっ!?- 「担任っ」 「は、はいっ」 マリアは教員に突っかかる。 「誰だ、コイツは、教えろ」 「や、八木 深也です。お家はとても裕福とは言えない苦学生ですが、元気で明るくて、とても良い子です、はい」 「どこが良い子か、コイツの壊したこのアダムー6、制作費1億円もしたんだぞ」 「ひいっ」 -それに、あの呪い、明らかに普段と規模が違っていた、ここに居る全員巻き込む程の威力があった― 「…彼を、医務室に連れて行って下さい」 愛理が言った言葉にその場の誰もが対応せず、黙って動かずにいた。 マリアは聞こえないフリをしてから、それを担任教師に小声で頼んだ。 そして、愛理の方を見ずに訊いた。 「こんな目にあっても、貴女はまだ学校に通うと言うのですか」 俯いていた愛理が、徐に顔を上げ応えた。 「はい、お願いします」 「担任、今日は休講にして頂きたい。私共の組織で教室を復旧します」 「わ、分かりました」 尚も、愛理の方を見ずにマリアは言った。 「迎えの車が来たら我々も今日は帰宅しましょう。また明日から学校に通えるように」 「…はい」 未だ床で寝ている深也を見つめつつ、愛理はマリアの後に付いて教室を出て行った。
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