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「大丈夫、麻酔弾です…」
愛理はようやく構えを解いた。
「愛理様、咄嗟の判断ありがとうございます」
「…」
愛理は、倒れている深也を黙って見つめていた。
それをマリアが見て思った。
-な、な、何なのだ、この男はっ!?-
「担任っ」
「は、はいっ」
マリアは教員に突っかかる。
「誰だ、コイツは、教えろ」
「や、八木 深也です。お家はとても裕福とは言えない苦学生ですが、元気で明るくて、とても良い子です、はい」
「どこが良い子か、コイツの壊したこのアダムー6、制作費1億円もしたんだぞ」
「ひいっ」
-それに、あの呪い、明らかに普段と規模が違っていた、ここに居る全員巻き込む程の威力があった―
「…彼を、医務室に連れて行って下さい」
愛理が言った言葉にその場の誰もが対応せず、黙って動かずにいた。
マリアは聞こえないフリをしてから、それを担任教師に小声で頼んだ。
そして、愛理の方を見ずに訊いた。
「こんな目にあっても、貴女はまだ学校に通うと言うのですか」
俯いていた愛理が、徐に顔を上げ応えた。
「はい、お願いします」
「担任、今日は休講にして頂きたい。私共の組織で教室を復旧します」
「わ、分かりました」
尚も、愛理の方を見ずにマリアは言った。
「迎えの車が来たら我々も今日は帰宅しましょう。また明日から学校に通えるように」
「…はい」
未だ床で寝ている深也を見つめつつ、愛理はマリアの後に付いて教室を出て行った。
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