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あなたは警察が調べれば、死亡時刻に誤差か生じることを案じた。
そこで、ダイアナの貞操を疑うふりをして、警察の介入をこばんだ。ほんとは、ダイアナの身が潔白なことは、あなたが一番よく知ってたんだ」
アンソニーは苦笑する。
タクミの背中で、ダイアナがつぶやいた。
「……ひどいわ。わたし、ほんとに悩んだのに」
「アンソニーにとっても、あれは本意じゃなかったんですよ。あなたに嫌われることは熟知していましたからね。
とにかく、あのころ、ダイアナを屋敷のに女主人に迎え入れたくない人たちの陰謀なんかもあって、オリビエさんの死は比較的かんたんに片づけられてしまった。
あの毒針の事件は誰のせいかわからないけど、二人の結婚をよく思わない誰かの仕業でしょう。アンソニーがダイアナを傷つけるはずはない」
すると、また、ダイアナが、
「違うの。あれをしたのは……わたし。わたしが自分で用意しておいたのよ。タイミングを見て自分で針を刺すつもりだったのに、何も知らないコンスタンチェが刺してしまって……」
予想外の告白に、タクミは数瞬、言葉を失った。
「……ええと、なんで?」
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