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最初に屋敷をおとずれた日、アンソニーはタクミを警戒しているようだった。
妻の浮気を案じているんだと言いわけしていたが、そうではない。
タクミはオリジナルダイアナの遠縁と名乗っていた。
もしも、タクミがオリジナルダイアナの顔を知っていれば、彼の犯した過去の罪が明るみになってしまう。
だから、警戒した。
だが、あのとき、タクミが寝ぼけた返事をしたので、彼は秘密が守られていることを知って安堵した。
でなければ、タクミの命も危なかった。
「オリビエさんは、こんなふうに考えたんでしょう。
一年前のモナコの事故のとき、二人が入れかわったあと、事故で本物のアンソニーが死んだと。アルバートさんは経済的に破たんしていたから、事故に乗じて兄になりすましたんだと。
そもそも、そこが計算違いだった。
あれは事故なんかじゃない。アルバートの綿密な計画による殺人だ。アルバートはあの事故が必ず起こるようマシンを改造して、スタート直前に兄とすりかわる計画を立てていた。
つまり、あなたがアルバートであるにしろ、アンソニーであるにしろ、残ったほうの双子の片割れは、殺意を持って兄弟を殺したことになる。
もし計画に不備が起きて、兄と入れかわれなければ、アルバートはレースを棄権していたはずだ。
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