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「好水属性魔力細菌感染症だそうです。すでに感染予防措置は取ってありますので、移ることはありません」
「ああ、水魔法使い病ね。そっか、それじゃあ、もうしばらく安静にしてないとね」
中年の女性は聞きなれない病名を口にした。好水属性魔力細菌感染症の俗称だろうか。
きょとんとしているクレーネーに、初老の男が口を開く。
「水属性持ちがかかる病気なんだよ。多分、あと一日もすれば熱は引くだろうけどね、しばらくは寝ていた方がいいよ。ぶり返すことが多いから」
「でも、ひまなんだもん」
「おや。無理して動き回って大好きなお師匠さんに心配かけてもいいのかい?」
「うー……」
理性ではわかっていても、まだまだ好奇心旺盛な年頃。じっとしているのは辛いのだろう。
ふと、自分がクレーネーくらいの年齢の頃はどうだったのかと考えて、その思考を停止させた。どうせ、戦場を駆け回っていた頃である。戦うか、寝るか、食べるか、くらいしかしていなかったあの頃、好奇心に身を任せていたら今生きていないだろう。
「ま、安静にしてるならいくらでも話し相手になってやるよ」
若い男がにかりと笑う。
「ほんと?」
「あぁ。……師匠さんの話しでも聞かせてくれよ」
「うん」
酷く楽しそうな笑みを浮かべて話し出したクレーネーを眺めながら、リューティスは枕元に置かれていた椅子に腰を下ろした。
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