三章 寒村と大蚯蚓

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   真夏の太陽が容赦なく大地を照りつける中、リューティスは砂漠の入り口にある寒村にたどり着いた。  この村はヤーヤイルから徒歩二時間半程度──リューティスの足では一時間程度のところにある。  リューティスはたどり着いた村を見て驚いた。村人たちの服や化粧が明らかに一般的な西の国の民と異なっていたからである。  砂漠の民とでもいうべきなのだろうか。身体に大きな布を巻き付け、頭にも布を巻き付けている。女性は目尻に朱色の顔料を塗り、男は頬に暗緑色の線を一本から三本描いている。馬ではなく駱駝(ラクダ)が村の中を歩き、人々は重そうな荷物を器用に頭の上に乗せて歩いていた。  中央の国もそうであるが、西の国ももともとは多民族国家である。今でこそ、言語も統一されているが、地方によって特有の訛りがあったり、物の名前に古い言語の名残が残っていたりする。しかしながら、周囲から取り残されたかのように、これほど色濃く民族特有の文化の残る民族は珍しい。  本来は長閑な村なのだろう。村の周囲には柵も何もなく、外敵から村を守るような造りはしていない。だが、村人たちの間にはぴりぴりとした緊張感が漂っていた。  女性たちは不安そうな表情で話し合い、男たちは険しい顔をしている。家の数から推測するに、人口は百五十程度いるはずなのだが、村の外の方にある家には人の気配がなく、皆、村の中央辺りに集まっていた。  また、子供の姿は全くなく、若い男は多いが若い女性の姿はない。子供や若い女性は街に避難しているのだろうか。 .
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