一章 国境の街、ヤーヤイル

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   しばらくして順番が回ってきて、問題なく街の中へと入ることができた。  ヤーヤイルはあまり西の国らしくない街並みだった。建ち並ぶ建物が統一された外見をしており、西の国特有の奇抜さ故に目立つ建物はない。 「……つまらない街だな」  相変わらず彼女の感性は理解できない。否、この場においておかしいのは彼女ではなく自分の方なのだろう。ここは西の国──魔法と芸術の国。この国の者からすれば、彼女の方が当たり前で、リューティスの方がおかしいのである。  リューティスは苦笑を漏らし、周囲を見回した。  行き交う者の多くは、冒険者よりも小綺麗な身なりの商人らしき者である。その中の大半は、砂漠に暮らす民からや砂漠の向こうから運ばれてくる珍しい物を扱う行商人だろう。 「だが、賑やかい」 「国境の街だからね」  中央の国から西の国に渡る時に足を運んだ街は、ただ関所の前に街を築いただけの小さな何もない街だったが、この街は商業で栄えている。 「まずは役所に向かうんだったか」  越境許可証の確認を、役所に申請するのである。確認をしてもらわなくとも越境許可証があれば越境することは可能であるが、越境の際の待ち時間が数倍から十数倍になる。中には三日かかってようやく越境できたという話もあるのだ。  一方、越境許可証の確認を役所で行ってもらっておくと、短ければ数十分で手続きが終わり、越境できるのである。  確認申請手続きも一時間から二時間くらいかかり、さらに越境許可証確認自体も一週間以上かかるのだが、あの狭い関所の建物の中で数十時間待たされるよりはこちらの方がいい。 「うん。時間がかかると思うから、シルウィさんは観光でもしてて」 「わかった。ついでに宿を探しておく」  彼女の気遣いに礼を告げて、リューティスは街の中央に向けて歩き始めた。 .
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