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砂漠の砂で作られているのだろうか、乾いた褐色のれんがを積み上げた建物が一般的なようである。
この大通りに面している店は、どこも繁盛しているようで、中にはリューティスでも聞き覚えのある名前の商会が経営する店や、富裕層向けの高級食堂など、様々な店が建ち並んでいた。
時刻はまだ午後一時を過ぎたところ。大通りは人通りが多く、時折その中を人を掻き分けるように馬車が走っている。
街の門での身分証の確認の際、役所の場所はついでに聞いていた。大抵のどの街もそうであるが、この街の役所も街の中央の方にあるという。
少し大きな神殿の前を通りすぎ、さらに門番曰く街で一番大きい大衆食堂の前を通りすぎて、魔法具屋と従魔屋──人に従うようにしつけられた魔物が売られている──の間に役所は建っていた。
周囲の建物と同じくれんが造りであるが、砂製の灰褐色のれんがではなく赤いれんがでできた建物だった。
『ヤーヤイル役所』と大きく書かれた看板が出入り口に掲げられており、ちらほらと出入りする者の姿はあるものの、すいているようだった。
建物の中に踏み入ると、越境許可証確認申請用の受付が設けられていた。流石は国境の街である。特に並んでいる者はおらず、リューティスは白に近い灰色のマントのフードを下ろし、“ボックス”から書類とギルドカードを取り出して受付の前に立った。
「こちらは越境許可証確認申請用の受付となっております。許可証の確認申請でお間違いないでしょうか」
「はい。……よろしくお願いいたします」
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