一章 国境の街、ヤーヤイル

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   産地に近いからこその贅沢な味わいだ。  一方、紅茶の方も驚くべきほど香り豊かだった。南の国には紅茶の有名な産地もある。この紅茶もそこから来たのだろうか。  ガトーショコラも紅茶もよく味わい、気がつけば皿もカップも空だった。旅の途中、口にすることができる甘味といえば干した果物くらいで、久々にまともに口にした甘味はとても美味であった。  チョコレートは日持ちするが、砂糖がたっぷりと含まれているそれは高価な嗜好品であり、チョコレート自体が高価なこともあり、中央の国や西の国では高価な代物で、一般庶民が簡単に口にできるものではない。  とはいえ、中央の国の首都では産地から直接転移魔法によって珍しい品物が輸入されてくるため、チョコレートも砂糖も、首都に限っては庶民もたまには口にできる程度の値段であり、そこまで高価ではないのだ。  しかしながら、一般的に高価な物と認識されているチョコレートを持ち歩くのは、目立つことを避けたいのならやめておくべきであろう。  故に、リューティスがチョコレートを口にしたのは久々だったのだ。  余韻に浸りつつ、“ボックス”から本を取り出して開いた。ゆっくり食べていたが、それでもまだ三十分も経過していない。手続きが終わるまでまだまだ時間がかかるだろう。 .
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