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「神たる者、体調を崩すなどあっては成らないことなれど・・・浅葱様の言う通りですわ」
浅葱は内心ほくそ笑むと、これ幸いとばかりに、桜華に向かい退去の意を示した。
「もっと早くに気付くべきでした。配慮が足らず申し訳ございません。・・・余り長居をするのも、お体に障りましょう。本日はこれにて、お暇させて頂きます」
「そ、そうですわね。・・・今度は調子が良い時にでも、ご招待させて頂きますわ。その時はごゆっくりなさって下さいまし」
浅葱はニコリと笑い「そうですね」と曖昧に返した。
「それでは、失礼致します」
一礼した後、立ち上がりコトハを抱き上げる。部屋を退出すると、迎えに来ていた侍女の1人がスッと現れた。
「玄関まで、ご案内致します」
「お願いします」
案内を受け、コトハと共に公園に戻る。コトハは軽く身動ぎ、浅葱の腕から抜け出し地面に降りた。
「・・・おねーたん、だいじょーかな?」
浅葱は素っ気なく返事を返す。
「大丈夫じゃないかな」
「ぐあい、わういの?」
「元気そうだったけどね。そうなんじゃないかな」
「ふーん」
コトハは、ジッと浅葱を見上げる。その目にはどんな風に写っているのか、浅葱は不安に駆られた。
コトハを見返し、眉尻を下げる。
「こんな浅葱は嫌いかい?」
コトハは目をパチクリとさせ、そうしてニッコリと微笑んだ。
「コトハ、どんなあちゃぎも、だいちゅき」
コトハは、浅葱の足元に抱き着き、頭を擦り付けた。
「おちゃんぽちながら、かえろーね」
浅葱は緩む頬を撫でながら、大きく頷いた。
終
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