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こちらを見つめながら誰かと話をしている男に「にゃあ」と一声鳴いて擦り寄った。 体を足元に擦り付け、頭を擦りながら、尻尾を纏いつかせた。 もう一度「にゃあ」と鳴けば頭を撫でてくれた。 「いゃぁー何だか今度は懐かれてしまいました。・・・えーーだから、分かりませんてば。・・・怒ったって仕方ないでしょ?大体、通路の途中に部屋なんて造るから可笑しくなるんですよ。結界だけにしておけばよかったのに」 顎下を撫でられて、ゴロゴロと喉が鳴る。今、側に居る子供があの時話をしていた十六夜と呼ばれた少年なら、話している相手は、もう1人の人だろうか。 「にゃあ」 また一声鳴いて膝の上に前脚を掛けた。人間は四角いもので、遠くに居る相手と話せるらしい。人に飼われている仲間に寄れば、それは『携帯』と言われる機械らしい。 でも、十六夜は何も手に持っていなかった。 「にゃあ」 ーーねぇ、誰と話してるの?どうやって話してるの?あの男の人なら、私も話がしたい。 にゃあ、にゃあ騒ぐと、十六夜はじっと目を見つめてきた。暫く無言のまま見つめ合いが続いた。 「・・・にゃあ」 「んーーーーダメだ」 十六夜は、諦めたようにハァッーと溜め息を吐き出した。
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