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「主様、猫ちゃんがさっきからずっと話し掛けて来てくれるんですが、何を言っているのか分かりません。・・・・・・はい。それは認めます。完全に修行不足です。なので、早くこちらに来て下さい。今直ぐお願いします」 「方向音痴だわ、修行不足だわ、かなり甘やかしてしまっていたようだな」 呆れた声が十六夜の後ろから聞こえた。ドキリと胸を震わせ、顔を覗かせた。 そこには、長い金色の髪を持つ男性が立っていた。Tシャツにジーンズ姿で、頭からは髪と同じ色をした耳が2つピョコンと出ている。腰の辺りには、どうやって出しているのか、何本もの尻尾が飛び出していた。 「珍しいですね。耳と尻尾を出してるなんて」 「この姿の方が、見つけやすいからな」 そう言って目を細めると、十六夜の肩の上から顔を出す真っ黒な猫に向かい手を差し伸ばした。 「おいで」 「にゃあ」 ーー人じゃないの?何で耳と尻尾があるの? 「人ではないよ。耳と尻尾があるのは狐だからかな」 ーー私の言葉が分かるの? 「分かるよ」 ーー狐だから? 「妖狐だからかな・・・それで、いつ頃こちらに来てくれるかな?」 差し伸ばした手を、所在無さげに揺らしながら拗ねる。 「にゃあ」 十六夜の肩に前脚を掛けて、ピョンと跳ねる。差し伸べられる腕に飛び込んだ。 爪を立てぎゅっとしがみ付けば、お日様の匂いが体を包み込んだ。
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