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十六夜が持って来てくれた暖かなミルクを飲み干すと、コトハは体をペロペロと舐め始めた。
毛繕いをし始めたコトハを、浅葱と十六夜は目を細め見つめる。
「・・・可愛いですね、主様」
「ああ・・・・・・襲うなよ」
十六夜は目を眇め浅葱を睨んだ。至極真面目な顔をして自分を見ていた浅葱に、思わず舌打ちをする。
「真面目な顔でしょーもない冗談は言わないで下さい。主様こそ、鼻の下伸ばして情けない」
「お前・・・今、舌打ちしたな?」
「気のせいでしょう」
しれっと答えてコトハへと視線を移す。
こそこそと話す二人を他所に、順調に毛繕いを終えたコトハが顔を上げた。
ーーあ、ごめんなさい。
コトハは、ミルクを飲み終えたら話をしようと約束していたことを思い出し、ペコリと頭を下げた。
(毛繕いしちゃった)
「構わないよ。今度は私も手伝って上げるよ」
「主様、エロいです」
「直ぐ変な風に勘ぐる十六夜が1番エロいだろう」
「僕には毛繕いという習性はありませんから」
「だろうな。逆にあったら怖いが」
軽口を言い合う2人を交互に眺め「にゃあ」と鳴く。
「・・・あ、ああ、すまない。話だったね」
「にゃあ」
浅葱はコホンと一つ咳払いをすると、居住まいを正した。
「私が妖狐だとさっき話しただろう?」
ーーはい。
「雪の降る夜、コトハを見つけたんだ。か細い声で助けを求める君を探して、公園の中に入った。微かに気配を感じるものの、事切れかけていた君の気配は微弱過ぎて、中々見つけられなかったんだ。ーーやっと見つけた時には、命の火は消えかけていた。そのまま死なすのは切なくてね・・・どうしても助けてやりたいと思った。それで、私の血を与えたんだよ」
ーー浅葱の血?
首を傾げるコトハに、浅葱は「そう、妖狐の血をね」と頷いた。
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