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◆ コトハが眠りに就いてから5年の歳月が過ぎた。今もまだ、コトハは眠り続けている。コトハの居る部屋には結界を張り、その周りを浅葱は特殊な通路で塞いだ。 この世には人の世と、狭間の世界がある。狭間とは、妖達の住む世界のことを言う。 妖も人も元は同じ場所で、共に仲良く暮らしていた。だが人は、自分達とは異なる姿や力を持つ者達を厭い、追い出してしまった。 そうして追いやられた者達は、自分達だけの世界を作り、そこに暮らし始めた。狭間と人の世は『狭間の通路』で繋がり、昔は行き来が可能だった。 しかし、ただの通路でしかなかったその場所は、人に悪しき感情を持つ妖達の気持ちに引き摺られるように変化し、いつの頃からか己れの意思を持つ存在になってしまう。 今では、容易に近付く事さえ出来なくなってしまっていた。 通路は唐突に口を開き、誘き寄せ獲物を取り込む。その対象は、人も妖も関係ない。無作為に選ばれ、飲み込まれていくのだ。そうして取り込まれた者は、その場所から抜け出すことが出来ず、通路によって精神も身体も蝕まれていく。 唯一、浅葱だけが干渉されない。対抗する力を持っていた。 だからなのだろう。遠い昔には神籍に名を連ね、神として崇め奉られていた。その神が人を恨み非道の限りを尽くしたのに、神籍を剥奪されただけで生かされてしまったのは。 自ら死を望む浅葱の声が、無視されてしまったのは。
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