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真っ暗な夜空から、冷たく綺麗な結晶が降って来る。ひらひらと舞う様は、白い花びらのようにも見えるし、タンポポの綿毛のようにも綿菓子にも見えた。
静寂に沈む公園の中を滑り台、ブランコ、噴水にベンチ。辺り一面があっという間に、白く染まっていった。
薄ぼんやりとした頭で空を見上げ、辺りを見渡し、舌を突き出した。綿菓子は甘くていい匂いがするはずなのに、それは冷たくて匂いもなかった。
直ぐに溶けてなくなってしまうから、お腹だって一杯にならない。
ーーお腹空いた。
冷たくて綺麗だけど、それだけ。
ーーお腹空いた。
それ以外の言葉は考えられない。
ーーお腹空いた。
ほんの何十分か前までは、今よりもまだ元気だった。この街も楽しかったけど、次はもうちょっと田舎に行こうと思ってた。
なのに・・・。
身軽だった体は、今では頭を動かすのもやっとだ。自慢の尖った爪も、誰よりも高く跳べた脚も、程よく筋肉の付いたしなやかな身体も、思うように動かせなかった。
土の上に横たえた身体を何とか丸めることに成功する。いつもはピンと立っている耳が、ペタンと垂れ下がっていた。
「・・・・」
ごくごく小さな声が出た。風にかき消されてしまったけれど。
このままでは死んでしまうのだろう。漠然とした思いはいつしか確信に変わっていた。
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