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「・・・そんなに繊細だったとは初耳だよ」
「傷付きやすいから優しく扱え」
「先ず自分を顧みてから言うんだね」
高宮は浅葱の言葉を「ふん」と鼻で一蹴すると、縁側にどしりと腰を下ろした。
「十六夜、俺にも酒を頼む」
「イヤです。高宮様にお出しするお酒はございません」
「お前も大概辛辣だよな。誰に似たんだか」
目を眇め浅葱を見るも、澄ました顔で素知らぬ振りを決め込む。
「お前らなぁ・・・俺に対する扱いがちーと酷くねぇか?」
「よーく自分を振り返ってごらん。どうしてそんな目に合うのか良く分かるから」
高宮は、何処から噂を聞き付けたのか、週に何度も訪れて、コトハの目覚めを訊ねた。
いつ目覚めるのか。
まだ目覚めないのか。
本当は既に目覚めてるのではないか。隠さずに教えろ。
しつこいくらいに毎回聞かされる浅葱や十六夜は、既にうんざりしている。態度にも言葉にも表しているのに、この犬神は一向に理解しようとしない。
「そうか、まだか」
顔や、態度に楽しみで仕方ない。そんな気持ちが溢れている。
「そんなに心配しなくても、仲間外れにはしない。手伝って貰うつもりでいるし、目覚めたら連絡だってする。だから安心して家で待っていればいい。高宮の顔は見飽きた」
もう来るなと、言外に込めた。いや、言葉にも出したはずだった。
「そうか。そうか。手伝いが欲しいか。任せておけ。ーーいやぁ、楽しみだな。・・・んじゃ、今日は帰るとするか。約束は忘れるなよ?また、近い内に顔を出す。じゃあな」
なのに、自分の都合のいい言葉だけを拾い上げ、高宮は機嫌良さげな顔で、さっさと帰って行った。
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