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高宮を追い出した十六夜は、そのまま廊下を抜けて、暖かな日差しが降り注ぐ部屋の中に入って行く。そこには慌てて用意した品々が、所狭しと並べられていた。 人型でも猫型でも、どの姿でも対応出来るようにと様々な物が用意されていた。それらのものを目視しながら、漏れがないか確認していく。 「・・・・・・大丈夫かな」 独りごちたその時、すっと障子が開いた。顔を向ければ、浅葱がそこには立っていた。久しぶりに見る主の顔は随分とやつれて見えた。 「準備は出来たか?」 「はい。滞りなく」 「コトハが目覚めた。これから迎えに行く」 浅葱は大振りのタオルと、哺乳瓶を手に取った。 「あ・・・え、えと、僕は何をすれば?」 明からさまに狼狽え、オロオロとする十六夜に浅葱は苦笑を浮かべる。 「落ち着きなさい。今は何もしなくていい。明日の朝までコトハの側に付く。その後、この部屋に連れて来るから、寝間の準備をしておいてくれ」 「受け賜りました」 「高宮には報らせておいた。奴も明日の朝にはやってくるだろう。奴の分の朝餉の用意も頼む」 「本当に報らせたのですね」 何とも言えない表情を浮かべる十六夜に、もう一度苦笑する。 「約束だからな」 浅葱はそう答えると、部屋を出た。そのまま廊下を突き進み何の変哲もない壁の前に立つ。 右手を上げて、その手を翳した。口元からは、澄んだ音が零れ落ちた。 浅葱の手に、ぼんやりとした灯りがともる。その光が壁の中へと吸い込まれていくと、その場所には今までなかった扉が忽然と姿を現した。
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