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頭に、体に、容赦無く降り続ける雪を払い退ける気力も、体力も残っていない。ただただ、小さな体を丸めて震えているしか出来なかった。
『・・・にゃあ』
最期の気力を振り絞り、声を出した。ちゃんと声として出ていたかどうかは、分からなかったけれども。
意識が混濁する。目が霞み、ぼやけた景色は白一色。空からは絶え間なく雪が降り続いている。体温を奪われ、まるで雪と同化するような感覚を覚えた。
ふっーと浅く息を吐き出した。丸めた体を更に小さく丸めた。
ーーーーそうして、静かに目を閉じた。
サクサクサク。雪を踏み締める足音が、小さな雪の塊の前で足を止めた。180を超えた長身を屈め、手を伸ばす。躊躇いもせず、雪の中に手を差し入れると、真っ黒い塊を取り出した。
「声が聞こえると思ったら、こんな所に居た。ーーーーおーい、まだ生きてるか?」
遠のく意識の向こうに、自分を呼ばう誰かの声が聞こえた気がした。
抱き上げる大きな手と、暖かな温もりに包まれる。
ーー男から漂うお日様の匂いが、凍り付いた心や体を暖めてくれるような気がした。
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