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頭の中に、やつれた顔をした浅葱が浮かぶ。
「あんたは何を考えているんだ?」
相手は神なんだから、なんて遠慮はもう何処にもない。
「今、何時だと思っている。夜中の3時だ。この時間は、人の世も妖の世も朝方とは言わないんだよ。夜中って言うんだ。何百年も生きてるクセにそんな常識も知らないのかよ。人の家に非常識な時間に押し掛けて於いて、眠っているであろう主様やコトハの元に押しかけるだぁ?ふざけんじゃないぞ」
今にも胸ぐらを掴む勢いで畳み掛ける十六夜に、高宮は目を白黒させた。
「ひとが堪えて大人しくしてれば好き勝手抜かしやがって・・・大人しく待ってられないなら今すぐ出て行け!二度と顔を見せるな」
尚も激昂する十六夜に「わ、分かった。分かったから落ち着け」と、高宮は宥めに掛かる。
「・・・落ち着け?落ち着かなくしてんのは誰だよ」
「悪かった。俺が悪かったから」
高宮は、目の前の部屋に急いで飛び込む。
「ここで大人しく待ってればいいんだよな?ちゃんと、浅葱や十六夜が呼びに来るまでこの部屋に居る。一歩も部屋からは出ない。だから、怒るな。な?」
「・・・・」
「確かに、今は夜中だ。・・・どう見ても、朝方って時間じゃないよな。どうも気がせいて我慢出来ずに、来ちまったんだ。浅葱にも、堪え性がないって言われる訳だよな。・・・反省してる。ちゃんと反省した。しかも、こんな迷惑な時間に来た俺を、追い返しもせずに招き入れてくれた十六夜には本当に感謝してる。・・・だから、許してくれないか?」
シュンと眉尻を下げる仕草は、子供が悪さをして、叱られへこんでる時のように見えた。きっと見えない耳や尻尾は萎れているんだろうなと想像出来た。
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