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こちらの様子を伺うように見る高宮に、少し言い過ぎたかもしれないと十六夜も反省した。
「悪気はなかったんだ」
ボソリと呟く高宮に苦笑した。
待っていたのは知っていた。週に何度も訪れては、コトハの様子を知りたがった。
気が急いてってのは真実だろう。
(悪い神ではないんだよな)
ただの従者の十六夜に怒られ項垂れる。その様子を眺めながら思う。
本来なら不敬を働いているのは十六夜の方だ。神罰を与えられたって文句を言える立場じゃない。
なのに、必死になって謝罪して許しを乞うてくる。
非は非と認め謝罪する。簡単なようで出来るものではない。況してや神籍に属する存在の彼らは不遜な者も多い。
特に浅葱を呼び付ける神は、高圧的で高飛車だ。何度か共をして訪れたこともあったが、往々にしてそんな者ばかりだった。
そんな神達ばかりだと思っていたのに。
自己中心的で我儘な男の心は、ただの無邪気な子供だったのだと知る。
そう言えばと、思う。高宮は一度たりとて浅葱を呼び出したことがなかった。どんな些細な要件でも、自ら足を運んでいた。
従者と主の友人という立場だから、コトハのことがなければ話をすることもなかったが、立場を振りかざして暴言を吐かれたり、傷付けられたことは一度もなかった。
どちらかと言えば十六夜の方が辛辣な言葉遣いで、邪険に扱っていた。
調子が狂うな。今の十六夜の心境は、正にそれだった。
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