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高宮の様子を眺めていた十六夜は、ふと聞いてみたくなった。週に何度も顔を出し、コトハを気にするその理由を。
でも、その前にと姿勢を正し向き直る。
「僕の方こそ申し訳ありませんでした。少しイライラとしてしまい、八つ当たりをしてしまいました」
頭を下げ謝罪の意を示す。
「いや、十六夜は悪くねぇよ。非常識な真似をしたのは俺の方だ。十六夜は怒って当然だ」
(ああ、本当に調子が狂う)
「止めて下さい。どうかいつもの、自己中心的な高宮様に戻って下さい」
「・・・俺はそんなに自己中心的か?」
あっと、十六夜は口を抑え、その自分の行動にも悔いる。
これではそうだと言っているようなものだ。確かにそうだと思ってはいるが、落ち込んでいる相手に対し、更に塩を塗るような行為をする必要はない。
今の高宮には傷を抉ることにしか成らないように思えた。
案の定、高宮は更に落ち込んだようで「はぁっー」と溜め息を吐き出した。
慌てたのは十六夜だ。焦ったように必死にフォローを試みた。
「高宮様は、確かに自己中心的で我儘な子供みたいな所がありますが、何を言われてもへこたれない、どんなに邪険にされても直ぐに立ち直ることが出来る立派なスキルをお持ちじゃないですか。僕ごときの言葉にそんな風に落ち込むなんて、高宮様らしくありません。どうか、何時ものように言い返して下さい。・・・僕は割りかし高宮様との掛け合いが好きなんですよ」
自分でも必死過ぎて、フォローしているのか貶めているのか分からなくなったが、今の本音をぶちまける。
「・・・自己中心的で子供」
バックに暗い背景を背負ったような顔で、高宮がボソリと呟いた。吹き出しをつけるなら『ガーン』だろうか。地面に減り込みそうな勢いで落ち込む高宮に、十六夜は更に慌てた。
「あーー」
十六夜は、頭を掻きながら言い訳を探すも見つからない。何せ全てが本音だ。自分の意を曲げてまでフォローをする気にはなれなかった。
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