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どうしたものかと、思考を巡らせる十六夜の耳に、「ククク」と笑い声が聞こえてきた。
「へ?」
聞き間違いだろうかと、声が聞こえてくる方へと顔を向けると、さっきまで落ち込んでいたハズの男が
肩を震わせ笑っていた。
「・・・らしいよなぁ」
そう言って「あっはっはっは」と笑い出す。キョトンと目を丸くしていた十六夜は、高宮の余りの変わり身の早さに憮然とした。
「・・・何ですか」
怒りに満ちた低い声を出す。
「・・・何だろうな」
尚も笑い出しそうになるのを必死で抑えながら高宮は十六夜を見た。
「そう、怒るな」
「さっきまで落ち込んでいたのに、いきなり笑い出す。こっちの気も知らず勝手過ぎます」
「悪い、悪い。・・・十六夜の気持ちはちゃんと伝わって来たぞ。ただな、慰め方が余りにもらしくて、思わず笑った」
だから、許せと高宮がまた笑う。
十六夜は、何だか怒ってるのも馬鹿らしくなりふっーと息を吐き、そして一緒になって笑った。
「どうぞ」
「どうも」
高宮にお茶を差し出し、改めて向かい合った。
「俺は勝手に寛いでるから、十六夜は休んでな」
「そのつもりです」
「・・・そうか」
「はい」
高宮は出された湯飲みを手に取り口に付ける。ゴクリと一口飲むと目の前に座る十六夜に目を向ける。
ぽりぽりと頬を掻く。もう一度お茶を飲み、懐からタバコを取り出した。
「神のクセにタバコですか」
「俗世に塗れてっからな」
「ここは禁煙です。自重して下さい」
「奴は吸わないのか?」
「・・・キセルは嗜んでいらっしゃいますが」
「だったら、いいじゃねぇか」
「だ・め・です」
「はい、はい」
高宮は出したタバコを懐にしまい溜め息を吐いた。
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