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「あいつには内緒にしろよ?色々うるさいからな」
「・・・はい」
「俺と浅葱はな、あいつが神籍に居た頃からの付き合いだ。酷く荒れてた頃のあいつも知ってる。俺は・・・何もしてやれなくて・・・結局神籍を剥奪されちまって今に至るんだが」
一旦言葉を止めると、十六夜に向かってニッと笑い掛ける。
「あいつがお前さんを使役したって聞いてまず驚いた。誰かを側に置くなんてのを『ある事』を境に、ずっと嫌がってたからな。だから嬉しかった」
「ある事?」
十六夜が問うと、それは、まぁ、あれだ。と言葉を濁す。
「その辺の詳しい話は奴に聞いてくれ」
浅葱に直接聞く勇気はなかったが、話が進まないような気がしたから、十六夜は素直に頷いた。
「俺は、奴はこの先もずっと1人で生きて行くつもりだと思っていた。妖は・・・特に神籍に身を置くような力のある奴は、滅多な事がない限り何千年と生きる。その間、ずっと1人ぼっちは寂しいじゃねぇか」
十六夜は、飄々とした主を思い浮かべた。寂しいなんて感情とは無縁に見える浅葱も、やっぱり寂しいと思うのだろうか・・・そんな風に思いながら。
「そして今回はコトハだ。・・・噂を聞いて更に驚いたんだぞ?浅葱が嫁を娶るなんてな」
「・・・よめ?」
十六夜は怪訝な顔で高宮を見た。
「嫁だ」
「えっ、て・・・よめって、あの嫁ですか?」
慌てる十六夜に首を傾げながらも「嫁は嫁だ」と答える。
「・・・誰が、誰を?」
その質問に高宮が眉を顰めた。
「浅葱が、コトハをだ」
「娶る?」
「・・・違うのか?」
「えっ、そうだったんですか?」
最後は2人で同時に言葉を出した。お互いがお互いをマジマジと見交わし、首を傾げた。
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