1

32/35

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
「あいつには内緒にしろよ?色々うるさいからな」 「・・・はい」 「俺と浅葱はな、あいつが神籍に居た頃からの付き合いだ。酷く荒れてた頃のあいつも知ってる。俺は・・・何もしてやれなくて・・・結局神籍を剥奪されちまって今に至るんだが」 一旦言葉を止めると、十六夜に向かってニッと笑い掛ける。 「あいつがお前さんを使役したって聞いてまず驚いた。誰かを側に置くなんてのを『ある事』を境に、ずっと嫌がってたからな。だから嬉しかった」 「ある事?」 十六夜が問うと、それは、まぁ、あれだ。と言葉を濁す。 「その辺の詳しい話は奴に聞いてくれ」 浅葱に直接聞く勇気はなかったが、話が進まないような気がしたから、十六夜は素直に頷いた。 「俺は、奴はこの先もずっと1人で生きて行くつもりだと思っていた。妖は・・・特に神籍に身を置くような力のある奴は、滅多な事がない限り何千年と生きる。その間、ずっと1人ぼっちは寂しいじゃねぇか」 十六夜は、飄々とした主を思い浮かべた。寂しいなんて感情とは無縁に見える浅葱も、やっぱり寂しいと思うのだろうか・・・そんな風に思いながら。 「そして今回はコトハだ。・・・噂を聞いて更に驚いたんだぞ?浅葱が嫁を娶るなんてな」 「・・・よめ?」 十六夜は怪訝な顔で高宮を見た。 「嫁だ」 「えっ、て・・・よめって、あの嫁ですか?」 慌てる十六夜に首を傾げながらも「嫁は嫁だ」と答える。 「・・・誰が、誰を?」 その質問に高宮が眉を顰めた。 「浅葱が、コトハをだ」 「娶る?」 「・・・違うのか?」 「えっ、そうだったんですか?」 最後は2人で同時に言葉を出した。お互いがお互いをマジマジと見交わし、首を傾げた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加