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「みゃあ、みゃあ」
コトハの鳴き声に、浅葱は目を覚ました。浅葱の体に鼻を押し当てて、何かを探る仕草を見せる。
浅葱はクスリと笑い、首の後ろを咥えて少し離れた場所に下ろした。
『生憎と乳は出ないんだ。少し待っていて』
「みゃあ、みゃあ」
『はい。お腹が空いたんだよね?』
浅葱の体が揺らぎ人の姿を取る。フラつきながらも、浅葱の元に戻って来ようとするコトハを手で抱き上げた。
哺乳瓶を口元に当てると、元気良くムシャぶりつく。最初の時よりもがっつくように飲む様を見つめ、知らずクスクスと笑い声が溢れた。
「そんなに慌てなくとも、誰も取らないよ?」
無心で飲み続けるコトハに声を掛けた。
そしてふと、顔を上げ、扉の向こうを見つめる。
「・・・困ったものだね」
結界の外。通路の向こうに訪れた客人に苦笑を浮かべた。
「何をそんなに慌てているのかねぇ」
十六夜の怒っている顔が容易に想像付いた。溜め息を吐き出し、コトハに目を向ける。
コトハはお腹が一杯になったのか、またうつらうつらとし始めた。それを見て、人の姿を解いた。
さっきと同じように体を舐めてやる。ペロリとお返しとばかりに、浅葱の口元を舐めるコトハの好きにさせてやった。
『ゆっくりお休み』
安心し切った顔をして眠るコトハにそう声を掛けて、浅葱も再び眠りに就いた。
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