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「それで?」
浅葱は改めて高宮を見る。先程無視された高宮は拗ねた顔を向けた。
「・・・それでとは?」
「何かあったよな?」
「・・・何かって・・・」
珍しく口ごもる高宮に首を傾げた。
「私の目には、妙に十六夜に懐いているように写ったけれど、気のせいか?」
「ああ・・・浅葱」
突然居住まいを正し、高宮は真剣な顔付きで浅葱を見返す。その変わりように戸惑いながらも、無言で先を促した。
「十六夜が気に入った。俺にくれ」
「断る」
一刀両断に切り捨てて、話を終わらそうとする浅葱に高宮が食い下がった。
「きっと、十六夜も俺に惚れてる。愛する二人を引き離す権利は誰にもない」
「何を根拠にして、訳の分からぬことをのたまわる」
高宮はともかく、どう見ても十六夜からは好意の欠片も見受けられなかったと言うのに。
「あいつは、ツンデレなんだ。ツンが多いから今まで気付かなかったが、今朝方はデレたのだぞ?あんな可愛い様を見せられたら、恋にだって落ちると言うものだ」
「その、湧いた頭を先ずは何とかしてはどうだ?」
「俺は本気だぞ?」
「気に入ったイコール恋愛じゃない。朝方何があったかは知らないけど、話が飛躍し過ぎだ」
「そんなことはない」
「今までそう言って、何人の相手に振られてきた」
「今回は違う。・・・もしかしたら、あいつは俺の番かもしれない」
真剣な表情で呟く高宮に、深い溜め息を吐く。
十六夜の何を見て『デレた』と解釈したのかは分からなかったが、この惚れっぽい友人がいとも容易く恋に落ちては失恋するさまを、もう数え切れないくらい見てきたのだ。
『俺の番』という言葉も、何度聞かされたことだろう。
どう言えば目を覚ますのかと、浅葱は頭を悩ました。
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