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「俺は十六夜が欲しい」
「頼むから無理矢理どうこうしようとしないでくれよ?」
「ダメなのか?」
キョトンと首を傾げられ、頭を抱える。
「何がツンでどこがデレか分からないが、無理矢理事に及ぶのは、世の常識として良くないだろう」
「だが、あいつは照れているだけだぞ?」
(何処をどう見たら照れているって解釈になるんだ)
会話にならないもどかしさにイラつきながらも必死にそれを押し殺す。
「十六夜は子供だ」
「安心しろ。気にしない」
「しろ」
「大体、子供だっつうけど、いつ大人になんだよ。あいつ何百年もあのまんまだよな」
「・・・数センチ身長は伸びてると思う」
「・・・・・・確か最初に会った時、もっと背もあったし、大人びてたよな?」
「だな」
「・・・何であんな風になったんだ?」
(今更、そこか)
何百年の間、何度も顔を見合わしていた筈なのに、興味のないことには素知らぬふりをする高宮は、十六夜のことをきっと名前くらいしか知らないのだろう。
更なる問題発生に、うな垂れた。
「あいつの記憶を封じている。頼むから、その事について、問い質したりするなよ?何がきっかけで戻るか分からないからな」
これだけは言って置かねばと、高宮に忠告した。
浅葱の脳裏には、かつて禍つ神に堕ちかけた十六夜が浮かぶ。全てを呪い、憎しみに凝り固まった姿は、今の十六夜からは想像も付かない。
「何で封じたんだ?」
「約束しろ」
当然湧き上がるであろう疑問を口にする高宮を無視し、強く迫った。
高宮は不承不承ながらも頷いた。
「・・・分かった」
「よし」
高宮の返事に浅葱は安堵の息を吐いた。
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