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「言いたいことは分かるけどね。あれが奴の美点でもあるから」
「・・・まぁ、頑張って回避しますよ」
「ん、頑張れ」
まるっきり他人事のように励ます浅葱を、十六夜が睨み付けた。
「みゃあ」
コトハが目を覚まし、小さく鳴いた。傍に座っていた浅葱の膝に前足を置き、じっと目を合わせる。
「・・どうしたんだい?ご飯じゃないのかい?」
おいでと、抱き上げた。
「みゃあ」
哺乳瓶を取り出せば、前脚で掴み、あむと口に入れた。幸せそうに飲む様を、浅葱と十六夜は目を細めて見つめた。
「可愛いですね」
「美猫だからね。人に変化した姿もさぞかし美しいのだろうね」
「・・・そう言うのを親バカと言うんですよね」
「自覚済みだよ」
「メロメロですね。目尻が下がりきっていますよ?」
「そりゃ、こんな可愛い姿を見せられたらな」
「お嫁に出す時は、泣くんでしょうね」
「嫌なことを言うね」
心底嫌そうな顔をして、十六夜を睨んだ。
「嫁には遣らないよ」
「ーー主様が娶られるからですか?」
探るような目を向ける十六夜に、浅葱は苦笑を零した。
「・・・噂話かい?」
「高宮様にお伺いしました」
「割とミーハーだよな」
浅葱は笑うと「噂は聞いてはいたけれどね。そんなつもりで助けた訳ではないよ」と、やんわり否定した。
「それを聞いて少し安心しました」
「・・・安心?」
「はい。つまりは自ら嫁を育てて、自分の好みのタイプに仕上げるってことでしょう?」
「イヤな言い方をするね。でも・・・そう言うことになるのかね」
「そこに、すざまじい執念と執着を感じて、若干引いてた所です」
「十六夜は、少しオブラートにものを包んで言う癖を付けた方がいいな。今のままだと、敵ばかり作ることになるよ?」
「人を選んでいるから、大丈夫ですよ?」
浅葱は瞬きをして、不遜な従者をジトと見つめた。
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