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「何処で教育を間違ったんだろうな」
うつらうつらとし始めるコトハから哺乳瓶を外す。寝ぼけ眼でさっきまで咥えていた哺乳瓶を探し、浅葱の指をかぷと咥え、ちゅぱちゅばと吸い始めた。
「コトハ、指からお乳は出ないからね」
苦笑を浮かべ、指を外す。そのまま狐の姿に変化した。
『十六夜、夕餉の準備を。コトハを寝かし付けたら向かう』
「受け賜りました」
十六夜の姿を見送り、コトハの体を舐める。さっきまで眠っていた筈のコトハは、パチリと目を開けて浅葱を見た。
『眠っていたんじゃないのかい?』
「みゃあ」
コトハは一声鳴くと、身を捩り浅葱の腕から抜け出した。浅葱がどうするのかと見ていると、尻尾に戯れ付いて来る。
軽く尾を揺らすと、しがみ付いて来た。
尻尾の1つを右左に動かすと、可愛い猫パンチを繰り出す。
『あはは、我が家のお姫様は勇ましいねぇ』
すっと引き、目の前で揺らす。すると、態勢を低くし、じっと目で追い始める。
(ほう)
更に尻尾を左右に動かすと、尻を振り始めた。飛び掛かる間合いを測るかのように揺らし、そうして一気に仕留めに来る。前脚で抑え、カプリと被り付く。そのまま振り続けると、コトハの体ごと付いて来た。
浅葱はクスクス笑い、尻尾を持ち上げた。カプリとしたまましがみ付くコトハを、自らの前脚で抱き込んだ。
『まだ、変化を終えたばかりなのだから、もう寝なさい』
諭すように声を掛けると、そっと口を開ける。
『いい子だ』
もぞもぞと動き、大きく口を開け欠伸をする。
『お休み』
「みゃあ」
コトハは静かに目を閉じて眠りに就いた。
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