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「助けるんですか?」
夢と現を行ったり来たりしていた。ここが何処で自分がどうなったのか分からない。
状況など何も把握出来なかったけど、ここが天国だと言われても、きっと納得した。
暖かな何かに包まれ、幸せな夢を見ている。そんな風に感じていた。
「そのつもりで、連れて来たんだけどな」
聞き覚えのある声が苦笑を伴いながら、言葉を紡いだ。
あの時、生きてるか?と声を掛けて来た人間に違いない。頭を撫でる大きな手にも、鼻を掠めるお日様の匂いにも覚えがあった。
「ですが、ただの猫ですよ?」
「だな」
「主様の血が、その猫にどんな影響を与えるか、分からない訳でもないでしょうに」
不満を滲ませた声は、変声期を迎える前の子供特有の高い声をしていた。その声に応えるのは、大人の低く艶のある声。
「ああ」
「それなのに?」
「それなのに。・・・てか、もう終わったことだし。今更だ」
「また、勝手な」
相手の男が、ハァッーと溜め息を吐き出した。
優しく撫でる手が離れて行く。追い縋りたい気持ちになったけど、身体を動かすことは出来なかった。
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