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「・・・でも」 ほんの少し躊躇する十六夜の先を目で促す。 「・・・先ほども、笑うと愛嬌のある顔だと言われるのだと、自分で自慢気に仰ってましたし、傲慢で我が儘な方ですが、外面だけ見ればモテそうですよね」 棘のある言葉は貶しているのか褒めているのか分からない。思ったままを素直に吐露する十六夜に、浅葱は頷いた。 「確かに、ある特定の相手にはモテるんだ」 「・・・ある特定?」 首を傾げる十六夜に、浅葱は意地悪な笑みを向けた。 「あの容姿にあの性格だからね。夜の蝶たちには人気が高いよ」 「・・・夜の蝶・・・」 十六夜が呆然と呟く。 「一夜限りの甘い逢瀬は得意なんだよ」 「・・・一夜限り・・・?」 十六夜にも浅葱の言わんとしていることが理解出来たのだろう。嫌悪感を滲ませた顔を向けた。 「ただ、本気になった相手にはモテない。必ず振られるんだ。何故だか分かるかい?」 浅葱の問いに十六夜は首を振る。 「高宮はね、惚れっぽい男で調子の良い軽い奴に見られることが多いんだが、あいつは狼だからな、性質は一途で常に唯一無二の相手を探しているんだ。惚れた相手に脇目もふらず突進して行き、所構わず愛を囁いて自分の囲いの中に取り込もうとする。最初は相手も自分だけを見てくれる男に自尊心や優越感を擽られて喜ぶんだよ。でも高宮の思い込みに面倒になり、執着と独占欲に怖くなるんだ。・・・で、結局逃げられる」 顔を引き攣らせる十六夜に浅葱は憐憫の視線を向けた。 「ただ、唯一の救いは熱しやすく冷めやすいところだ。相手に脈がないと気付いたら、高宮の熱も冷める。だから一過性のものだと思って、嵐が通り過ぎるのを待つんだね」 「・・・それはいつ頃まで待てばいいんですか?」 恐る恐るといった風に問い返す十六夜に浅葱は肩を竦めて、さあと返した。 それこそ神のみぞ知るだと思ったが、明らかに意気消沈する十六夜には到底言えなかった。
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