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ーーみちゃい?
コテンと首を傾げるコトハに、ニコニコと笑いながら浅葱は頷いた。
「もちろん、見たいな」
ーーでも、猫のがちゅきて
「・・・誰にそんなデマを聞いたの?」
ーーあちゃぎ
浅葱は目を瞬かせた。
「・・・私?」
ーーあい
記憶を辿り、自分の言動を思い出す。でも、いくら考えてもそんなことを言った記憶はなかった。
「・・・私が何て言ったか、教えてくれる?」
ーー猫のコトハ、かあいいの
「・・・それだけ?」
ーーあい
浅葱はホッと息を吐くと、コトハを抱き上げる。
「確かに、猫のコトハは可愛いよ。でも、人型のコトハも凄く可愛いと思うんだ。浅葱は見てみたいな」
ーーみちゃい?
「みたい。凄くみたい」
ーーあい。あげう。
コトハは浅葱の手からぴょんと飛び離れると、座っていた場所に戻った。
ふわりとコトハの毛が逆立つ。耳と尻尾がピンと立つ。眩い光がコトハを包み、一瞬の後、消えて行った。
光の後、その場に居たのは真っ黒い子猫ではなかった。
年の頃は人で言う所の1、2歳。艶やかな黒髪を腰近くまで伸ばしている。目はくりっと大きめで、綺麗な琥珀色をしていた。小さな鼻の下は少し大きめの口。
頭の上に付いた耳と、ゆらゆら揺れる二本の尻尾が可愛いらしい。
浅葱は想像以上に愛らしい少女に、まるで眩しいものでも見るように目を細め見つめた。
「あちゃぎ」
名を呼び、抱き付いて来るコトハを抱き留める。
「やっと会えた」
「あえたね?」
「会いたかったよ」
「・・・うれちぃ?」
「凄くね」
「コトハもうれちぃ」
コトハはそう言って、頭をグリグリと擦り付けた。
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