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◆ 「お久しぶりです」 十六夜は目の前に立つ高宮に頭を下げる。 「あ、ああ。・・・浅葱は?」 「お部屋においでです」 十六夜の言葉に頷く。 「これから仕事の話だ。案内は要らねえから、誰も近付けさせないようにしろ」 それは暗に、隣に立つコトハに近付くなと言っているのだろう。十六夜は了承の意を込めて頭を下げた。 コトハが初めて変化したあの日から、10日が経っていた。毎日顔を見せていた筈の高宮は、その日を境にパッタリと姿を見せなくなっていた。 ここ何年かの間で、こんなにも姿を見なかった日はなかった。 あの日、十六夜は用事で留守にしていた。戻って来た十六夜を出迎えたのはコトハだ。 目を丸くし、驚く十六夜に悪戯が成功したとばかりに、コトハが笑った。 「・・・高宮様?」 高宮は一度もコトハを見ない。仕事の時はピリピリとする高宮だが、こんな頑なではなかった筈だ。 浅葱からコトハに虐められて拗ねていると、説明を受けてはいたが十六夜は戸惑いを隠せなかった。 「何だ?」 「・・・いえ」 怪訝な顔を向け「急いでるんだ」と、高宮は慌しく部屋へと向かった。 「・・・いちゃい?」 「ん?」 「たかみゃ?」 コトハは、ジッと高宮の後ろ姿を見つめている。眉間にシワを寄せるその表情は、かなり真剣な顔だ。 十六夜は首を傾げながらもコトハの質問に応えた。 「高宮様です」 「・・・たかみゃちゃま?」 その舌足らずな口調には思わずクスクスと笑ってしまう。 「そうです。犬神様ですからね。呼び捨てはダメですよ」 「あい」 「主様はこれからお仕事のお話だそうですから、コトハのお部屋で遊びましょうか」 「あい」 十六夜はコトハの手を握りコトハの部屋へと向かった。
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