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「天寿を全うするは、自然の理。手を差し伸べて干渉するのは侵してはならない禁忌です。主様だって分かっているでしょうに」
「それでも、助けを求めてきた相手を、むざむざ見過ごしにして、放って置くなんて出来なかったんだ。・・・まぁ、これが人間ならば捨て置くがな」
最後は苦々しい口調で呟く。
「主様」
咎める口調に、男が苦笑する。
「分かっている・・・つもりだ。ただ、この愛らしい獣を見捨てることが出来なかった。弱々しく鳴く声を無視出来なかった。例え、理に反することだとしても、だ」
「主様は、人外にはお優しいから」
「若干の棘を感じるな」
「感じて頂けたなら幸い。含ませていますからね」
「嫌味な奴だ」
また、頭に手が触れる。耳裏を撫でられ、顎下を擽られた。
「主様、まだその猫は本調子ではありません。それに、猫というものは気まぐれに纏わりつくものにて、余り構われると嫌われますよ」
「嫌なことを言うな」
ゴロゴロと鳴りそうな喉を押し留める。また手が離れて行く。今度こそと、追うように頭を動かした。でも、微かに身体を震わせることしか出来なかった。
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