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暫くしたのち、コトハがお腹を摩りながら出て来た。
「いちゃい、おなかグーグーよ?」
「お風呂に入ったらご飯にしましょうね」
十六夜の言葉にコトハは眉を顰める。
「・・・いちゃい、メメよ?」
「コトハがメメですよ?」
「コトハ、いい子」
「いい子はお風呂に入りますよ?」
十六夜がそう言うと、コトハは泣きそうな顔で「コトハいい子。・・・はいう」と呟いた。
十六夜は、笑いそうになるのを堪えながら、頭を撫でてやる。
「はい、よく出来ました。今日は、主様がご用事でいらっしゃらないから、十六夜と一緒に入りましょうね」
「あい」
十六夜は、コトハと手を繋ぐと風呂場へと向かう。
「あ、コトハ?」
「あい」
「さっき、高宮様を呼び捨てにしていましたが、メメですよ?ちゃんと、高宮様と呼ばなくてはね」
「・・・たちゃま?」
「いや、それは違うから」
それでは、誰を呼んでるのかすら分からない。
十六夜が風呂から出ると、先に上がったはずのコトハが、服も着ず濡れたままで走り回っていた。
「コトハ、ちゃんと体を拭いて、服を着ないと風邪を引きますよ?」
「つおい子」
ふんっと気合いを入れて肘を曲げる。ペタンとした二の腕をポンと叩くと得意気に鼻を鳴らす。
「モリモリ」
(いや、ペタンコだから)
心の中でツッコミを入れ苦笑を零す。
「例えモリモリでも、お風呂上がりにそんな格好をしていれば風邪を引きます。風邪を引けば、主様も悲しまれますよ?」
「んーー泣いちゃう?」
「きっと。心配で心配で泣いちゃうかも、ですよ?」
「・・・きう」
「はい。先ずはタオルで拭きましょうね」
頭からすっぽりと被せゴシゴシと拭いて行く。
「直ぐご飯にしますからね」
「おなか、グーグー」
「はい。服を着たら食べましょうね」
十六夜は手早く服を着せると、手を引いて部屋へと戻った。
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