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「・・・いちゃい」
お気に入りのタオルを手に、十六夜の部屋へと入って来たコトハは、しゅんと項垂れる。
さっき寝かしつけ、自身も寝ようと布団に入ったところだった。
「眠れませんか?」
「・・・うん」
いつもは浅葱に包まれるように眠るコトハは、寂しくて部屋を出て行く十六夜を追い掛けたのだろう。
「じゃあ、一緒なら眠れますか?」
「あい」
パッと顔を上げてニコニコ笑うコトハに、布団に入るように促した。
「但し、私は獣ではありませんから、このままですよ?」
「あい」
素早く布団に潜り込み、ぎゅっと抱き付いてくるコトハをそっと抱き締め返した。
「明日、天気が良ければ散歩にでも行きますか」
「ちゃんぽ?」
「はい。妖の世界にはまだ連れて行けないので、人の世になりますが・・・人の世は今の季節、花が咲き乱れ綺麗ですよ?桜も咲いている頃でしょう」
「行くー」
コトハがキャッキャと嬉しそうに笑う。
「その代わり、猫の姿になって貰わなければいけませんが、よろしいですか?」
「よろちいよ」
「じゃあ、早く寝てしまいましょう。明日は一杯歩きますからね」
「あい」
「おやすみなさい」
「おやちゅみね」
十六夜に体を擦りよせると、コトハはスースーと寝息を立て始めた。
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