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家の門を潜り中に入ると、十六夜はホッと息を吐いた。
「・・・いちゃい、イタタよ?」
その言葉に十六夜はコトハを見る。コトハは繋いだ手を持ち上げて「イタタなの」と訴える。
「あ、ごめんね」
慌てて手を離すと、コトハはその手をペロペロと舐めた。
「・・・おちゃんぽ、おあり?」
首を傾げ、十六夜を見上げる。
「・・・そうですね。何だか疲れてしまって・・・終わりでもいいですか?」
「あい。・・・ねんねちゅる?コトハ、おうたちってるよ?」
「歌って下さいますか?良く眠れそうです」
「あい!おうた、おうた」
コトハは十六夜の手を握り、率先して歩き出す。
「・・・コトハ」
「あい?」
「・・・さっき・・・いえ、何でもありません」
十六夜は先ほどの出来事を問いかけようとしたが、逡巡したのち先に浅葱に報告した方がいいだろうと思い止めた。
「コトハも一緒にお昼寝しましょうね」
「・・・コトハ、ネムネムちないよ?」
部屋に入り、布団に横になる。隣にコトハも入り込み、可愛い歌声を聞かせてくれる。時折、十六夜も一緒になって歌い、気付けばコトハは夢の中だ。
そんなコトハの寝顔を眺めながら十六夜は、さっきの出来事について考えを馳せた。
神の結界を破るなんてことは、通常では考えられないことだ。妖力が強いとは言え、コトハはただの妖に過ぎないのだから。
考えられるとしたら、コトハの中に流れる浅葱の血に寄る影響だろう。
(苦情が来なきゃいいですけど・・・まぁ、いいかな?)
浅葱がなんとでもするだろうと、十六夜は浅葱に全て委ねることにして、考えを放棄する。
コトハの穏やかな寝息に耳を傾けながら、十六夜も眠りについた。
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