3

2/19

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
『十六夜』 その声は頭の中に響いた。切羽詰まった声音だった。 (主様?) 『十六夜、高宮が怪我をした。今直ぐ館に運び込みます』 その言葉に、息を飲む。 『・・・十六夜、聞いていますか?』 (あ、はい。・・・怪我の状態は?) 『余り、芳しくない。死ぬことはないでしょうが、傷は深い。・・・準備をして下さい』 (受け賜わりました) 十六夜は立ち上がり、共に寝ていたコトハを見る。コトハも起きたのか、ジッと十六夜を見ていた。 『コトハは?』 (ここに) 『なら、そこから動かないように言って下さい。自室に運び込みます』 (はい) 「コトハ、高宮様が怪我をされたようです。主様が連れて帰られた後、手当をしなければなりません。その間、コトハはここに居て下さい」 「・・・あい」 「私は準備がありますので行きます。1人で大丈夫ですね?」 「あい」 コトハが頷くのを確認し、十六夜は部屋を出た。 大量の湯を沸かし、タライに上げる。お神酒とタオル、体に巻く包帯を浅葱の自室に運び込む。 布団を敷き、全ての準備を整え終えた頃、浅葱が戻って来た。 高宮の姿を見て絶句する。着ている服はあちこち切り裂かれ原型を留めていない。体中が赤く染まっていた。1番酷いのは腹に出来た傷で、ぼたぼたと歩く場所に、赤黒い血溜まりを作っていた。 高宮は、十六夜を見ると青白い顔に笑みを作る。 「・・・しくじっちまった」 喋るのも辛そうな高宮に、眉を顰めた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加