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「こんな時に、軽口を叩くのはお止め下さい」 「・・・じゃあ・・・泣きそうな顔を、止めろっ」 「泣きそうになんて、なっていません。どれだけ自意識過剰なんですか」 「はっはっは・・・いてて」 豪快に笑い、痛みに顔を顰める。高宮を布団に横たえた浅葱が、十六夜に目を向けた。 『外へ』 その目に頷いてみせた。 「食事の準備をしてきます。・・・治療が終わったら、無理してでも食べて頂きますからね」 十六夜の言葉に対し、高宮は嬉しげに「おう」と応えた。 部屋を出て、台所に入った。そのまま流しに手を付き大きく息を吐き出した。 先ほどの高宮の姿が脳裏を離れない。高宮は大したことないと笑っていたけれど、心配させない為に無理して笑っていた。神は不死身だと聞く。でも、痛みを感じない訳じゃないだろうに。 「・・・・・・いちゃい?」 台所で蹲っていると、コトハが側へと寄って来た。十六夜の顔を覗き込み、泣きそうに顔を歪めた。 「・・・いちゃい、イタタ?」 「僕はどこも痛くないですよ?」 「たかみゃ?」 「はい。高宮様がイタタですね。でも、治療を受けていますから、大丈夫ですよ。直ぐに治ります」 その言葉は、コトハに言っているようで、本当は自分に言い聞かせていた。妖狐の血は、万病に効く。勿論怪我だって治せる。浅葱が自ら治療を施しているのだから、直ぐに傷は癒えるだろう。 大丈夫だと、己に言い聞かせる。でも言い聞かせる端から高宮の姿が思い起こされた。
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