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十六夜は大きく深呼吸を一回すると立ち上がった。 「さてと、怪我をされた高宮様と治療にあたられている主様の為に、滋養に良い物を作りましょうかね」 その言葉に、コトハが手をあげる。 「コトハも!コトハも!」 「手伝って頂けますか?」 「あい」 元気良く頷くコトハに、ニコリと微笑んだ。 「では、よろしくお願いします」 「あい」 コトハと共に食事の準備を整えた頃、浅葱がやって来た。湯浴みをしたらしく髪の毛が濡れている。 「あちゃぎ」 コトハがパッと顔を輝かせ、浅葱に抱き付く。浅葱はコトハを抱き上げると、頬を擦り寄せる。 「主様、お疲れ様でございました」 「おちゅかえちゅ」 コトハが十六夜を習い浅葱を労う。 「はい。お疲れ様」 ニコリと微笑み、コトハの頭を撫でる。 「高宮様は」 「もう大丈夫ですよ。お腹が空いたと騒いでいます」 「ーーそれを聞いて、安心しました」 浅葱の言葉に心底安堵し、一瞬泣きそうになった。そして、そんな自分に首を傾げる。 (あんな姿を見せられたから、動揺しているだけだ) 心の内に巣くった感情をそう評した。 そんな十六夜の様子を、探るように浅葱が見る。 「・・・あのバカ犬の言っていることは、強ち間違いでもないのかもしれないな」 「えっ?」 浅葱の呟きが聞こえなかったのか、十六夜が顔を上げ問い返す。 「いや、食事の支度は?」 「整いました。主様は如何なさいますか?」 「一緒に食べよう」 「受け賜わりました」 「コトハは、高宮を見舞ってやって頂けますか?」 「・・・たかみゃ?」 キョトンと聞き返すコトハに浅葱が頷いた。 「はい。コトハに優しくされれば、きっともっと元気になります」 「あい、みあうのよ」 「はい。お願いします。十六夜、頼んだよ」 「はい」 頭を下げて浅葱を見送り、配膳の準備に取り掛かった。 十六夜は自然に頬が緩み、口角が上がるのを止める事が出来なかった。
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