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「たかみゃ、イタタ?」
食事を終え、幾分か顔色の良くなった高宮を見て十六夜はホッとする。
「いや、俺は強いからな。痛くねぇぞ」
既に癒かけているとは言え、あちらこちらに傷を作り、体に包帯を巻きつけている高宮の言葉には説得力がない。
だが、幼いコトハを気遣う気持ちが伝わり、その場に居る者達の気持ちを暖かくした。
「たかみゃ、つおい子」
「おう」
「へーき」
「おう。平気だ」
「だいじょー?」
窺うような顔でそろそろと近付くコトハが、そっと包帯越しの身体に触れた。
「お、おう・・・いっ、痛っ、痛い、コトハ、痛いぞ」
優しく撫で摩っていた手で、ぎゅっぎゅっと傷口を押さえ始めたコトハを、十六夜は慌てたように引き離した。
「ダメですよ。コトハ」
「・・・イタタ、ちがうて」
「い、いや、今のは結構きたぞ?」
涙目になっている高宮を見て、十六夜は溜め息を吐いた。
「コトハ、怪我をすれば誰だって痛いんですよ?例え、犬神と言えど・・・」
(・・・怪我?)
十六夜は自分の言葉に引っかかりを覚えて首を捻る。
「浅葱、お前も見てねぇで止めろ」
「・・・知らぬ間に、随分と仲良くなって」
出す声がいつもより低い。
「はぁ?お前ふざけるなよ。誰がどう見たって虐められてたんだろうが。変なヤキモチ妬いてんじゃねぇぞ?」
軽口を叩く高宮をジッと見る。視線をズラし、今は浴衣に隠れ、見えないまでも、包帯を巻いているであろう上半身を見た。
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