40人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
『けがいぱい。あかいのいぱい』
高宮へのコトハの言葉を思い出す。
(あの時、コトハは高宮様の腕を掴み、必死で言葉を紡ごうとしていた)
『けがいぱい』怪我をしたのは高宮。
『あかいのいぱい』全身を血塗れにして。
「お?どうした十六夜。俺に見惚れてんのか?」
十六夜の視線に気付き、喜色満面の笑顔を向ける高宮を十六夜は黙殺する。
「・・・主様」
「どうしました?」
「おまっ・・・相変わらず容赦ねぇな」
拗ねた口調で口を挟む高宮を睨み付ける。
「黙っていて下さい」
「・・・はい」
シュンと項垂れる高宮を一瞥し、改めて浅葱を見る。
「けがいぱい、あかいのいぱい」
「おう、そう言えば赤い毛の奴は居なかったぞ?」
見当外れのことを口にする高宮を、もう一度睨み付ける。そう言えばと、十六夜は思い出す。
あの時も、高宮の見当外れの解釈で話は有耶無耶になってしまったのだ。
「あの言葉は、この事を示唆していたのではないでしょうか」
十六夜の言葉に、浅葱は視線を高宮に向ける。
高宮は2人に見つめられ、挙動不審に辺りを見渡した。
「・・・成る程」
十六夜の言葉に納得したように呟き「コトハ」と呼んだ。
「あい」
コトハは十六夜の腕から離れると、浅葱の元へと向かう。ぎゅっと抱き着き頭を擦り付けた。
最初のコメントを投稿しよう!