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フッと意識が覚醒した。頭を上げて、キョロキョロと辺りを見渡した。
「にゃあ」
ーー誰も居ないの?あの優しい人達はどこ?
「にゃあ」
呼び掛けに応えてくれる声も、気配もなかった。ここが何処だかは分からなかったけど、家の中であることだけは分かった。
体を起こすと、少しフラついた。何とか上掛けから抜け出しもう一度鳴き声を上げた。
「にゃあ」
再度キョロキョロと見渡すと、薄っすらと開いた扉を見つけた。
頭を使って、扉を押し開ける。薄暗い廊下に出る時は、ちょっとだけ躊躇した。
真っ直ぐに続く長い廊下を見つめ、するりと隙間を擦り抜けた。部屋を出た途端、得体の知れない怖さを感じて、ぶるりと身を震わせる。
ピクピクと耳を動かし、辺りの気配を窺った。
しんと静まり返った廊下からは何の気配も感じられなかった。でも、本能が警告を鳴らす。この場所は危険な場所だと知らせてくる。
暫く逡巡したのち、歩き出した。このままここに止まっていても、何も変わらないと思ったから。
ーー細長い廊下を、随分歩いたような気がした。曲がり道もなく、部屋へと続く扉もない。白っぽい壁と壁の間にある板間をひたすら歩いていく。
変化のない景色は時間の感覚も狂わせる。歩いた時間は1時間なのか、30分なのか、もしかしたら10分も経っていないのかもしれない。
永遠にここから出られないような気がして、心細くなった。姿の見えない誰かに向かい、大きく「にゃあ」と鳴いた。
鳴き声が辺りにこだました。響いて来る自分の声に驚き、怯えた。耳がペタンと折れ、尻尾が尻の間に挟まれる。脚が竦んで、一歩も動けなくなった。
「ーー見つけた」
不意に後ろから声を掛けられて、ビクリと体を震わせる。直ぐさま振り向き、毛を逆立てて「フッー」と威嚇した。
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