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「それと・・・」 少し言い淀む十六夜に、浅葱は首を傾げる。 「どうした?」 「その・・・桜華様は噂をご存知で・・・コトハを許嫁だと勘違いをされてまして・・・僕も敢えて否定をしなかったので、そのまま信じていらっしゃいます」 「・・・成る程」 浅葱は呟き、口角を上げる。 「嘘なのか?」 高宮が横から驚いたような顔で口を挟んで来る。さっきまで拗ねていた高宮を、浅葱はジッと見つめた。 「な、なんだ?」 「いや」 それでも視線は外さない。 「・・・何を企んでやがる」 「・・・・・・何も」 (嘘だ) 高宮と十六夜は、2人同時に心の中で叫んだ。 「その話も心に留めて置きましょう。ーーさて、私はそろそろ寝ると致しましょうか」 浅葱はそう言うと、コトハを抱き上げ立ち上がる。 「・・・十六夜」 「はい」 「高宮は、多分今日の夜熱が出るだろう。さっきも少し熱かったしね。看病を頼みますよ?」 「・・・えっ?」 十六夜の顔からサッと血の気が引く。逆に、高宮は嬉しそうに、ニコニコと笑みを浮かべた。 「あ・・・主様?」 「大丈夫です。いざとなれば、傷口を殴ればよろしい。痛みに耐え切れずコト切れますからね」 その言葉を聞き、高宮はそっと傷口を触った。痛そうに顔を歪める様子に、十六夜は笑い出しそうになるのを堪えた。 「受け賜わりました」 受け賜るな。パッと勢い良くこちらを向いた高宮の、恨みがましい声が聞こえた気がして、十六夜は思わずクスクスと笑った。
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