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「あちゃぎ」 布団に横たえると、コトハが目を開け浅葱を見た。 「起こしてしまいましたか?・・・お腹空きましたか?」 浅葱の問い掛けに、ブンブンと首を振った。 「・・・コトハ?」 「ごめんちゃいなの」 耳を伏せシュンと落ち込んでいるコトハに、浅葱が目を丸くする。 「何故、コトハが謝るのですか?」 「きれぇーなおねえたん、プンプンなの」 その言葉に、浅葱はフッと笑う。 「コトハは何も悪くないですよ?勝手に閉じ込めて怖い思いをさせたんです。悪いのは、桜華の方ですよ」 「・・・おーか?」 「綺麗なお姉さんの名前ですよ。それよりも、私の方こそ謝らなければなりません。私の知り合いが、怖い思いをさせました。・・・ごめんね」 浅葱がそう言って目を伏せた。 「コトハ、つおい子。だいじょーだよ?」 「・・・大丈夫なんて言わないで下さい。寂しいじゃないですか。・・・コトハにはもっと甘えて欲しいのに」 浅葱が拗ねた口調で言うと、コトハは人型を解いて子猫の姿になった。 ーーあちゃぎ、ペロペロなの 期待に満ちた目を見つめ返し、浅葱は狐の姿になる。 (こういうのではないのだが、まぁいいか) 浅葱はコトハの体を、ペロペロと舐めてやった。 十六夜が居て、コトハが居る。失くしてしまい、もう2度とは手に入らないと諦めていたものを再び手に入れた。 (守る為なら、その努力は惜しまない) うつらうつらとし始める愛し子を腕の中へと抱き込んだ。暖かで大切な存在だ。 浅葱は、今ある幸せを噛み締めながら眠りについた。
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